資産運用、投資のプロはこう考えている―いますぐ始める自分とお金の成長戦略
良書だが、、
個人が老後資金をどのように運用していけばよいか、主として
機関投資家の年金資金運用法を参照しつつ説いた本である。
個人においても「ALM」(資産と負債(将来必要な支出)を
マッチさせて運用を考えるやり方)的な考え方が必要であり、
漫然と銀行預金だけに頼っているととんでもないことになり
かねない。その際、国内外の株式や債券に適切に資金を分け、
投資のスタイルについても自覚的である必要がある。なお、
リスク資産への配分法については個々人の人的資源や
不動産所有の有無に応じて適切なあり方が変わってくる。
といったあたりが本書の中心的な主張であり、至ってまと
もな考え方である。「ALM」という概念をご存じない方は、
本書を読んで一度自分の将来の支出と収入、現在の
資産と負債について真剣に考えてみればよいと思う。
このように全体としては良質な情報を含んだよい本なのだが、評者
にはこの本は運用におけるコスト意識が希薄であるように思える。
例えば投資信託を買ったり売ったり持っていたりすると手数料や
税金がかかるがこれらコストの記載はほとんどない。この本でも
薦められている海外債券などは実質的な手数料がいくらなのか
分からないようなものが多い。さらに、二ヶ月に一度公的年金が
入らない月に分配金が入るような金融商品を賞賛するくだりがある
が、こんなものは多大な手数料を金融機関が巻き上げるためだけに
存在しているようなシロモノであって純粋な資産運用の観点からは
一顧だに値しない(ちなみに「グローバルなんとかファンド」
とか「毎月分配型なんとか」といった投信がその類である)。
本書では資産運用の基礎知識を大いに学ぶことができると思うが、
実際に金融商品を選ぶ段には別の書物で勉強した方がよいと思う。
と、裏書きを見てみると著者は野村證券の執行役なのであった。
なるほどこの本に勧められている方法でお金を運用すれば彼の
会社が儲かる仕掛けなのもむべなるかな。まことに残念ながら、
本書は画竜点睛を欠く一冊である。
おすすめ度:

発売日: 2006-06
発売元: 東洋経済新報社
