図解入門ビジネス 知財評価の基本と仕組みがよーくわかる本―2005年4月施行の新職務発明制度に対応
鈴木 公明

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知財への経営学的アプローチ
本書の「知財評価の基本と仕組み…」とのタイトルは、記載内容の一部しか伝えていない。
本書が画期的であるのは、従来のクレーム解釈や保護対象論とは全く異なるアプローチで知的財産をとらえ、それを包括的に示し得た点にある。それはいわば経営学的アプローチと言えるものであり、知的財産を経営資源と位置づけた上で、知財部員や法律家の視点ではなく、経営者の視点からその合理的マネジメントを行うことが企業の生命線であり、そのマネジメントを成功させるためには価値評価が必須であるとする視点を明確に打ち出した点である。
本書と同様の視点の広がりを感じさせる既存の書籍としては、鮫島正洋編著「特許戦略ハンドブック」(中央経済)や渡邊俊輔編著「知的財産 戦略・評価・会計」(東洋経済)をあげることができるが、いずれも複数の執筆者が大テーマごとに各自の研究成果や実務概要を持ち寄ったという感が強く、本書のように著者の一貫したポリシーの下に執筆されたものとは自ずと趣が異なっている。本書の著者は、およそあらゆる観点から経営資源としての知的財産のありようを説いており、ゼネラリストのスペシャリスト、知財分野のプチ立花隆とでも言えそうな様相を呈している。本書の各部をとらえて、「知っている事項」、「焼き直し」などという印象を持つことは「木を見て森を見ず」であろう。
本書の価値は、従来意識的に俯瞰されることのなかった経営資源としての知的財産の全体像を平易に描写した点にとどまらない。最先端の金融工学であるオプション理論の知的財産への適用について、世界レベルの権威者によるシミュレーションを用いた価値評価事例を紹介すると共に、オプション理論に基づく「柔軟性の価値」が認識できるとしても、「特許の価値」としては認識すべきでない場合がある点を示唆している点や、特許に固有のオプションに言及している点も他に類を見ない。具体的な手法が示されていないのが残念であるが、何にでもオプション理論を適用できるがごとき既存の説明に胡散臭さを感じていた評者としては、筆者による更なる研究の進展を期待したい。
20世紀における金融分野の2大発明と言われるオプション理論と証券化の双方に知的財産が深く関わっていることは興味深い。筆者に続き、知財と金融の境界領域における研究者、実務家が今後輩出されることを期待する。
本書は、知財経営の裾野の広がりを象徴する書籍となろう。
知財評価の基本と仕組みがよ~くわかる本
著者による「知的財産の価値評価」に最近のトピックスを加えて書き増した焼き直し本。
評価すべき対象を明確化し、その正しい評価の必要性を説くことに一応の成功を得ているだけに、官界と主要企業が癒着して冒した怠惰の結果を暴くことになっていることには著者も気づいていないのかもしれない。
総花的なトピックス紹介として、評論家やえせジャーナリストの話題にはなるだろうが、少なくとも、今後仕事として正しい特許管理やコンテンツ管理を追求していくためには、少し遠回りなっても、この著者が与えてくれる理解の近道への誘惑には乗らないほうが賢明だろう。
弁理士にとっても必要な書
近年、顧客から特許取得の相談に加え、権利取得後の特許マネジメントに関する相談も増えてきているが、これといった良書もなく困っていた。
しかし、本書では、「資産としての特許」といった観点が、図解され分かりやすく論じられているため大変参考になった。
経営戦略上の新たな特許活用方法を学ぶ必要のある弁理士の方々にとっても、本書は必読の書である。
おすすめ度:

発売日: 2004-10
発売元: 秀和システム